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ブロックチェーンが実現する諸々についての,日本の弁護士によるエッセー的な考察です。
スマートコントラクトは、ブロックチェーン上でプログラムが動く仕組みです。この仕組が実現したことにより、様々な取引がブロックチェーン上で可能になります。このような世界をクリプトエコノミクスというようです。クリプトエコノミクスでは、従来の(日本の)法律上の概念では解釈困難な問題が色々と発生します。
たとえば、日本の民事法では、法律上の主体として、自然人(人間)と法人(会社等)という法人格が定められ、契約は法人格同士で行われることになっています。
しかし、Dappsでの取引においては、このような主体がなく、スマートコントラクトとの間と契約しているような状況が生まれます。
また、刑事規制的な賭博やネズミ講、高利貸し的なことを考えた場合も、誰が主催しているわけでもないような状況で、そのようなことが行われることになります。
また、暗号資産・仮想通貨自体が法律上の物でも債権でもないが、法律上の意味がある何かということになっていて、その位置づけも未定です。
そして、そのような新たな法律的な関係が全世界レベルでひろがっています。
この問題について、日本の法律適用云々を議論することは、メインの問題ではないと思えます。日本法に限らず、「どこかの国の法律で」とか,「どこかの国の裁判所・司法機関によって解決する」とかということは,無意味とはいえないまでも,やはり,メインの問題ではない気がします。
では,完全に無法地帯なのでしょうか?
人類の商取引の歴史において,そのトラブル解決に国家の司法機関が乗り出したのは,ごく最近のことなのだろうと思います。では,それ以前の商取引は「無法で強い者が勝つ」世界だったのか?というと,そんなことはなく,ある種の商道徳と,リスク回避の知恵によって,大方うまくいっていたのだろうと思います。
クリプトエコノミクスにおいて、基本的には国家の司法機関による解決という仕組の導入は困難なのではないか,という気がしています。なので,昔ながらの商取引のモラルやスキルが大切になってくるのではないかとも思えます。
司法による救済が期待できない商取引の世界は,大半の方にとって未知の世界に思われます。
日本法の世界では,法的(実際に日本法の土俵かどうかは別として)トラブルに対処することを仕事にしてよいのは,基本的には弁護士ということになっています。そうなると,やはり弁護士としては,意識せざるをえない世界なのかなと思います。
また,弁護士は,そもそもトラブルの発生状況や,解決の雰囲気,防止の手段といったものは,各種の職業の中では,経験豊富な部類に属すると思います。
なので,弁護士が,司法機関を期待できない,古くて新しい取引の世界について,考察していくことは意味があるのではないかと思います。
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