イーサリアムと貸金契約

投稿者: mt 投稿日:

世の中には様々な契約がありますが,イーサリアムでのスマートコントラクトでは,金銭のやりとりをする契約との親和性が高いと言えます。
その代表的なものは,貸金契約です。
日本の法律において、お金を貸す契約は,金銭消費貸借契約が典型的な契約として定められています。しかし,先日の民法改正まで、消費貸借は要物契約(つまりお金等の現物を渡さないと成立しない)とか,片務契約(借主だけが義務を負う)だとか,特殊な発想がありました。そこを緩和して,要物や片務でない契約も認めたとか言いますが,どうにも仮想通貨での検討をするには,消費貸借契約は明治の香りが強すぎます。なので,貸金契約として説明します。

お金を貸す場合に決めるべきことは,

  • いくら貸したのか
  • 返済方法(どうなったら完済か)

です。もっと言えば返済方法に尽きます。それを決めるために,

  • そもそもいくら貸したのか
  • 金利はいくらなのか
  • 分割払いの場合,どのような場合に一括払いになってしまうのか

を決めることになります。

このようなあたりは,プログラムで記載するのに,それほど困難はないものと思われます。

イーサリアム上での貸金契約で,問題となるのは,与信審査と言われる部分です。つまり,あるアカウントに貸付をしてよいのかどうかという判断です。
これについては,現状からすると,現実の人間にアカウントの紐づけをして,別途「イーサリアムでの支払いが困難な場合は,現実の人間が支払う」旨の契約をしないと,難しいと思われます。
アカウントの残高が空になって踏み倒されてしまったら,それまでになりそうです。かといって,現実の人間とも契約するのでは,通常の貸金契約の支払いの便宜にイーサリアムを使うというだけで,イーサリアム上での貸金契約というのは,憚られます。

将来像を見据えて考えてみます。
貸金契約において,支払いを確保する手段として,昔からあるのは,

  • 担保をとる
  • 保証人をとる

という方法です。

現状では、ある仮想通貨を担保にして、別の仮想通貨を借りるレンディングというサービスが既に動き出しています。
ただ、これだといわゆる貸金ではなく、ある種の換金に過ぎないのかなんともいえない感じもあります。
いずれNFTアートや、メタバース上の不動産が担保として仮想通貨を貸すということになってくると、貸金契約の趣きが強くなりそうです。
現実世界の不動産等を担保とするには、各国の法制度が整う必要がありそうです。たとえば、日本法では担保の権利は、物権とされ、物権は法律で定めた場合のみ権利が発生することになっています。

保証はもう少し難しくなります。保証するアカウントも,ドロン(残高をカラにして踏み倒し)されてしまったら意味がないからです。なので,保証するアカウント自体は,現実の法人等で実態が確保されている,諸々の取引実績からして何らかの信用が得られているというようなアカウントである必要があります。
で,このアカウントに対して,何らかの保証委託契約(保証をしてもらう契約。場合によってはイーサリアム外での現実契約)をすることで,保証を得て,イーサリアム上で融資を得るということはありうると思います。この保証を裏付けとする契約というのは,その他の契約においても,必要となりそうな気がするので,別途検討してみたいと思います。

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