SmartContractと法人格

投稿者: mt 投稿日:

日本の民事法の考え方によると、契約当事者になることができるのは法人格がある存在に限られます。
法人格があるのは、人間(自然人といいます)と法律によって特別に法人格が与えられたもの(法人といいます)ということになっています。

SmartContrartにおいては、契約の相手方がブロックチェーン上のプログラムと思われる状況が生まれます。ブロックチェーンがプライベートなもの、またはせめて管理者が明確なものであれば、契約相手として何らかの法人格ある存在を想定できる場合もありそうです。
ただ、現状の多くのDappsは、分散化の理念をすすめるため、そのような形式を敢えてとらず、あたかも誰でもないものと契約しているかのような状況を意識的に作り出しているといえます。

そこで、スマートコントラクト上でのお金の貸し借りのような契約類似の状況を法律的に分析しようとすると、どうしても法人格の問題を検討せざるをえなくなります。そこに何らかのケリをつけないと、先にすすめるのが難しいと言えます。

現状、日本法ではSmartContrartに法人格を与える法律はないので、現状は法人格はありません。ただ、日本法においても、権利能力なき社団という理屈があり、法人格がない団体(典型的イメージとしてはマンション管理組合)に対して法人格があるかのような扱いをする場合があります。
DappsがDAO(分散型自立組織)として運営されているといえるのであれば、現状の権利能力なき社団の論理を使える可能性もあるかもしれません。ただ、現状では、DAOも全面的な運営責任を負っているというよりは、一部のパラメータの変更について多数決をとっているに過ぎないことが多いと思います。

現状の権利能力なき社団の論理自体も、民法にとって想定外だった社会的状況に対応するために解釈によって生まれて理屈です。なので、SmartContrartやDappsの出現という新たな社会的状況に対応するために、何らかの法律理論が生まれる可能性があります。

別の観点から説明すると、SmartContrartに法人格があるかのような扱いをする社会的必要性が生じた場合に、国会が法人格なり準法人格なりを与える法律を制定するという流れと、法律未制定の状況で裁判所が解釈(権利能力なき社団のような解釈)によって準法人格があるかのような扱いをした判決を下すようになるという流れがありうるということです。

ただ、このような法律機関による正式な動きとは別に、法人格の問題を考える必要性もあります。むしろ、そのほうが重要かもしれません。というのは、基本的にSmartContrart上の法律問題については、世界中の人の参加を予定している以上、どこかの国(ましてや日本)の法律や司法機関による解決の重要性は低いと言えます。
とはいえ、何らかの紛争発生が予測される以上、その紛争を解決する枠組みを考える必要があります。
そのような枠組みを考える上でも、SmartContrartに準法人格を認め、SmartContrartとの契約を契約として扱い、SmartContrartに対する権利を債権と呼んでみることは有力案となりそうです。

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